♦ 新・事業承継税制は改正前とどう変わった?  

※株価のチェックをお忘れなく!

♦ 現金や預金が名義預金と指摘されるケースとは? 

※名義保険にも要注意!

♦ 平成30年度の税制改正によって何が変わった? 

※ご存じですか~法定相続情報証明制度

 

 

 

◆贈与による納税猶予の適用を受けている場合でも、株価のチェックはお忘れなく!

新・事業承継税制と呼ばれる、非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の特例措置には、定められた期限があります。平成30年4月1日から平成35年(2023年)3月31日までに、都道府県知事に承継計画を提出し(円滑化法施規則17②)、平成30年1月1日から平成39年(2027年)12月31日までに、贈与または相続により、現経営者等から後継者に株式を移転しなくてはなりません(措法70の7の5①、措法70の7の6①)。

期限内に計画的に事業承継を行うとすれば、株式の移転の方法は、贈与によるものが多いと考えられます。そこで、贈与による特例措置の納税猶予の適用を受けた後、次のそれぞれの場合において、納税猶予の対象とされた株式の価額について、考えてみます。

先代経営者A(贈与者)は、後継者B(受贈者)にその有する非上場株式(甲社)のすべてを贈与し、Bは贈与税の納税猶予の特例措置の適用を受けました。

  1. 贈与者であるAが死亡した場合

納税猶予されている贈与税は、一定の手続きのもと、免除されます(措法70の7の5⑪)が、この時点で、AからBへ贈与された株式は、BがAから相続により取得したものとみなされ、相続税の課税の対象となります。この場合の株式の価額は、贈与時の価額となります(措法70の7の7①)。

  1. 受贈者であるB(後継者)が、贈与者であるAより先に死亡した場合

納税猶予されている贈与税は、一定の手続きのもと、免除されます(措法70の7の5⑪)。次期後継者は、Bが保有していた株式を、相続により取得し、相続税の課税の対象となります。この場合の株式の価額は、贈与時の価額ではなく、相続時の価額となります(相法22)。

2の場合には、相続税の課税の対象となる株式の価額は、相続時の価額となりますので、贈与による納税猶予の適用を受けた後も、毎決算期には、株価算定を行うなど、常に株価には、注意しておきましょう。なお、1の場合、2の場合も、引き続き納税猶予の適用を受けることができます(措法70の7の2①、措法70の7の4①、措法70の7の6①、措法70の7の8①)。

 

 

◆相続税の申告時には、名義預金ならぬ「名義保険」の確認もお忘れなく!

生命保険の契約者が相続人で、保険料負担者が被相続人であった場合の生命保険契約が、いわゆる「名義保険」と呼ばれます。

保険会社から発行される保険証券をみてもわかるように、ここには、①契約者、②被保険者、③受取人の記載はありますが、④保険料負担者の記載はされていません。

現在まで引き続き保険料を支払っている生命保険契約については、その保険料負担者を把握することができますが、一時払いされた生命保険契約については、保険料負担者が誰であったのか、記憶からも薄れがちではないでしょうか。

①契約者=妻、②被保険者=妻、③受取人=子、④保険料負担者=被相続人、このケースで説明をします。

保険料負担者が死亡した場合、契約者であるその妻が、保険料負担者の死亡により、死亡時における解約返戻金相当額を取得したものみなされます(相法3①三、評基通214)。しかし、保険料負担者が死亡しても、被保険者が死亡していないため、保険金は支払われません。

そのため、相続財産であると気がつかないまま、課税漏れが起こる可能性が高いものとなります。

相続が起こった場合、相続人が契約している生命保険の保険料の支払者が被相続人でなかったかどうか、確認することも必要です。

 

◆ご存じですか?「法定相続情報証明制度」

この制度は、平成29年5月29日から始まりました。

この制度が始まるまでは、相続手続きには、「戸籍謄本の束」を、相続人の間で使い回しをしたり、または、複数の謄本の束を用意したりと、手間と時間がかかっていました。

相続人やその代理人が、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本と相続関係一覧図を法務局へ提出することで、登記官から認証を受けて交付される「法定相続情報一覧図の写し」が「戸籍謄本の束」の役目を果たします。

この証明書は無料、かつ、必要な枚数を発行してもらうことができるので、手際よく相続手続きを行うことができます。

法務局へ申し出ができる人は、相続人とその代理人です。

税理士は、代理人となることができますので、相続税の申告業務を依頼するときに、作成をお願いしてみてはいかがでしょうか。

詳しくは、下記のサイトをご参照ください。

http://www.moj.go.jp/content/001222823.pdf