♦ 事業承継は、4つの視点に留意する必要がある

※遺留分に関する民法の特例のご紹介

♦ 利用したい2つの非課税制度と注意点

※相続時精算課税の盲点

平成30年度の税制改正によって何が変わった?

※一般社団法人課税の見直しは吉?

 

 

 

■ 事業承継における遺留分に対する対策について

中小企業の円滑な継続を支援する目的で制定された「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(円滑化法)」における3つの措置には、非上場株式等に係る相続税の納税猶予等の措置(いわゆる事業承継税制)のほか、遺留分に関する民法の特例、金融の支援措置があります。

ここでは、「遺留分に関する民法の特例」について、紹介していきます。

<遺留分とは>

遺留分とは、一定の相続人が、被相続人の財産について承継できる割合のことで、民法において保障されています。

これは、遺族の生活保障と最低限度の家族財産の公平な分配を行うことを趣旨としています。

遺留分の権利者は、配偶者・子・直系尊属で、その割合は、相続人が直系尊属のみの場合は、相続財産の1/3の法定相続分、それ以外の場合は、相続財産の1/2の法定相続分となります(民法1028)。

<事業承継と遺留分>

生前に後継者である長男に自社株式1,000株をすべて贈与していた長男の父親A(配偶者は以前死亡)に相続が発生した場合について、考えてみます。

Aは、「すべての財産を長男に相続させる」旨の遺言を残していました。相続時における財産は、現預金1,000万円のみで、相続時における生前贈与した自社株式の時価は14,000万円です。

この場合の遺留分は、1億5,000万円(現預金1,000万円 + 自社株式14,000万円) × 1/2 ×1/3 =2,500万円となり、相続財産を受け取れない長女・二女は、長男に対して、それぞれ2,500万円の遺留分の減殺請求をすることができます。

長女、二女から遺留分の減殺請求がなされた場合、長男は、長女と二女に、それぞれ2,500万円の遺産を渡すか、代償金を渡すことになりますが、代償金が用意できない場合には、自社株式を渡さなくてはならなくなります。

これでは、Aが生前に長男を後継者として、その経営権である自社株のすべてを贈与した意味がなくなってしまいます。

このような事態を回避するため、円滑化法では、「遺留分に関する民法の特例」を規定し、あらかじめ、推定相続人間で、贈与により取得した株式について、次のいずれかの合意をしておくことができるようにしています。

<遺留分に関する民法の特例>

遺留分に関する民法の特例には、次のふたつがあり、どちらかを選択して適用を受けることになります。

①非上場株式について、遺留分を算定する財産から除外する(円滑化法4一①)

②非上場株式について、遺留分に算入する価額を固定しておく(円滑化法4一②)

上記のAの事例にあてはめると
①の適用を受ける場合、遺留分の対象となる財産は、現預金1,000万円となり、遺留分は、1,000万円× 1/2 ×1/3 = 166.6万円となります。この金額であれば、長男は、相続した現預金から長女、二女にそれぞれ遺留分を支払うことが可能です。

②の適用を受け、非上場株式の価額を1株3万円に固定しておいた場合、遺留分の対象となる財産は、現預金1,000万円と自社株式3,000万円(1,000株×3万円)合計4,000万円となり、遺留分は、4,000万円× 1/2 ×1/3 = 666.6万円となります。この金額であれば、長男は、相続した現預金に手持ちの現預金を合わせて支払うことが可能です。

このように、遺留分に関する民法の特例の適用を受けることにより、長男は贈与により取得した自社株式を引き続き保有することができます。

<おわりに>

円滑な事業承継を進めるためには、税制面ばかりでなく、遺留分に関する民法の特例の適用についても検討することも大切です。

遺留分に関する民法の特例についての要件や手続き等は、下記の、中小企業庁のサイトで簡潔に説明されています。

http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/pamphlet/2012/download/1003Shoukei-3.pdf

 

■ 相続時精算課税制度の盲点

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から、推定相続人である20歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合に、暦年課税制度(1月1日から12月までの1年間に贈与を受けた財産については、110万円を超える部分が課税の対象)とは別に、選択することができる贈与税の課税制度です。

相続時精算課税制度は、2,500万円までの贈与財産には相続税がかからず、2,500万円を超える部分に対し、一律20%の贈与税が課税されます。贈与財産の種類や金額、贈与回数に制限はありません。一度、この制度を選択すると、選択をした年分以降はその贈与者から贈与された財産については、この相続時精算課税制度が適用されることとなります。また、この制度を選択した贈与者がなくなった場合には、その相続税の計算において、相続税の課税価額に、贈与を受けた財産の価額(贈与を受けた時点での価額)が加算されます。

この財産が、贈与者である被相続人の居住用の宅地であった場合には、小規模宅地等の課税の特例の適用はありません(小規模宅地等の課税の適用が受けられる財産の対象は、「相続または遺贈により取得した財産」に限られています(租法69の4))。

小規模宅地等の特例の適用を受けることができる同居親族の方に、その宅地等を贈与する場合には、十分ご検討ください。

 

■ 平成30年度の税制改正によって何が変わった? 

平成30年度の改正で厳しくなったと言われる改正のひとつに、「一般社団法人課税の見直し」が挙げられています。

先月に参加したセミナーでは、この改正を「吉」と取る考え方が述べられていました。詳しくは、こちらのページで紹介しています。ご興味のある方は、こちらを、ご覧になってください。

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